3月になって雪のことを考えるというのは後ろ向きか天邪鬼(あまのじゃく)という気もしますが、今が暖かいからこそ雪の美しさとその冷たさに憧れるのかもしれません。

私自身が雪の寒い日に生まれたせいか、雪を見ると胸が熱くなり、不思議と生への欲望が湧いてくるのです。

アメリカの詩人、ロバート・フロストの有名な詩で私が好きな詩のひとつ、"Stopping By Woods on a Snowy Evening" (「雪の夕べ森のそばにたたずんで」) をご紹介したいと思います。雪の音まで聞こえてくるような情景描写はすばらしく、また隠喩(metaphor)に満ちた詩なので、想像力を掻き立てられます。


Stopping By Woods on a Snowy Evening

                     - By Robert Frost

Whose woods these are I think I know.
His house is in the village though;
He will not see me stopping here
To watch his woods fill up with snow.

My little horse must think it queer
To stop without a farmhouse near
Between the woods and frozen lake
The darkest evening of the year.

He gives his harness bells a shake
To ask if there is some mistake.
The only other sound's the sweep
Of easy wind and downy flake.

The woods are lovely, dark and deep.
But I have promises to keep,
And miles to go before I sleep,
And miles to go before I sleep.


雪の夕べ森のそばにたたずんで

                     - ロバート・フロスト

この森は誰のものか わたしにはわかっている。
でも その人の家は村にある。
おそらく彼は見ていまい、わたしがここにたたずんで
雪に埋まった森を あかず眺めているのを。

わたしの馬は けげんなようすだ。
一年じゅうでいちばん暗いこの夕べに
近くに農家のかげも見えない
凍った湖と森のあいだで止まるのが。

馬は鈴をひと振り鳴らし
まちがいではないの と聞いている。
そのほかに聞こえてくるのは
かすかな風に 雪ひらの舞う音ばかり。

森はやさしく 暗くて深い。
でも 約束のしごとがある。さあ、行こう、
眠るまでにまだ何マイル、
眠るまでにまだ何マイル。


仕事に疲れ、人生に疲れたとき
明日のことは考えずに
全ての現実を覆い隠す雪の森を眺めていたい
森はやさしく全てを包み込んでくれる
何も言わずにきっと私を受け入れてくれるに違いない

でも、私にはまだやるべきことがある
まだやり残したことがある
さあ、頑張って歩かなくては。