もうどれくらい歩いているだろう。
森の随分深いところまで来てしまった気がする。
明るい方角を目指してきたつもりなのに
いつのまにかさらに奥深くまで来てしまったようだ。
少し疲れた。暫く休むことにしよう。

森は美しい。
青く生い茂る樹木に咲く白い花々。
鳥たちの心地よいさえずり。
沸き出でる冷たい泉。

だが、夜の森は時に恐ろしい。
飢えた獣たちの声に怯えなければいけないこともある。
凍える寒さに身を震わせなければいけないこともある。

でも、森に入ったことを後悔はしていない。
地平線しか見えない平原を歩くより遥かに楽しいと思う。

森の出口はわからないけれど
私はまるで出口を知っているかのように
再び歩き出す。