一ヶ月くらい前、頭のなかにプラックホールが出来た。ちょうど、握りこぶしくらいの小さいやつだ。
そして、2週間くらい前から、そのブラックホールから小さな宇宙人がでてくるようになった。毎晩、僕がレム睡眠に入ったとたん現れる。
毎日、東の空が薄っすらと白んでくるころ、宇宙人はブラックホールから顔を出して何も云わずに深い井戸の底のような目でじっと僕を見つめる。
その漆黒の瞳は悲しみに満ちていて、僕は、金縛りにあったみたいに身体が動かなくなってしまう。そうして、「悲しみ」が僕の心にまるで喜びみたいに沁み込んでくる。
「悲しみ」が僕に沁み込むと、身体が感電したみたいになる。しばらくすると宇宙人はまたブラックホールのどこかに行ってしまう。それはほんの数秒のような気もするし、何時間のような気もする。
そして今、僕の心は「悲しみ」で一杯になってしまった。漆黒の目をした宇宙人の悲しみ。悲しみ。悲しみ。悲しみ。悲しみ。悲しみ。悲しい悲しい悲しい。
心が「悲しみ」で一杯になってしまって困ったなと思っていると、突然瞳から涙が溢れた。僕の周りが洪水になってしまうほどたくさんの涙が流れた。涙と一緒に「悲しみ」も流れ出た。そして、頭にあったブラックホールが消えて、それ以来宇宙人は姿を見せなくなった。本当に変なヤツだったな。