救済


ひとりで部屋にいたら沈黙に押しつぶされそうになって
苦しくなったので部屋をでた。

既に私のみぞおちあたりまでを
砂利のように占領してしまっている沈黙を追い払おうと
賑やかな街にでた。

街はいつものように人や車であふれていた。
口を大きく開けて静かに笑う若者たち。
渋滞に苛つきながらも静かに走る車。
巨大スクリーンではどこかで見た顔が口をパクパクさせている。

私はまるで水のなかにいるみたいに
聞こえるはずの音が何も聞こえない。

私は音を求めて街を彷徨い歩いた。
沈黙の恐怖に怯えながら
ぐるぐると
ぐるぐると
馬鹿みたいに歩き続けた。

もうだめだと思ったとき
「嗚呼」
とどこかでカラスが鳴いた。