1万3千以上もの島々からなるインドネシア。そのほぼ中央に位置するバリ島には、宗教と人々の暮らしが自然の中に一体となって根付いています。バリは、「神々の住む島」といわれるように、精霊と魔物の棲む島です。熱帯樹の緑は月光を浴びて妖しく光り、単調なガムランの奏でる音楽を聴いていると、まるで何かに取り憑かれたように肉体と時間の感覚が曖昧になります。その独特のエキゾチズムと美しい自然が世界中の旅行者をを惹きつけてやみません。

バリを旅していると其処此処の谷間に広がるライステラス(棚田)の濃淡の緑に目を奪われます。四季のないのバリでは、年間2〜3回米作りが可能で、田植えが終わったばかりの水田の隣で黄金色の稲穂が頭を垂れていたりと、少し違和感のある光景が見まれます。バリの稲作は田植えから収穫までの過程が宗教と深く結びついていて、水を引くとき、田植え、刈入れなどの節目ごとにヒンドゥー教の豊穣の女神デウィ・スリに祈りを捧げます。

バリには、大きな寺院から祠までを含めると2万以上もの寺院があると言われています。境内の構成はどの寺院も似ていて、ひとつの塔を割ったような形の割れ門「チャンディ・ブンタル」があって、境内に入るとすぐに壁があり、その壁の横を回りこんで入ると中には、五重の塔のような、幾層かの屋根を載せた塔「メル」があります。この塔は層が多いほど神聖とされています。この奇妙な形の割れ門には、「心を割って入れ」といった意味があるとか、邪が入ろうとすると押しつぶすためといった意味があるようです。また、邪は直進しかできないとされているため、割れ門の先には必ず壁があってその進入を防ぐ様式になっています。

バリ島の宗教はインドから伝播したヒンドゥー教と、土着宗教とが結び付いて独自の形態を持った『バリ・ヒンドゥー』と呼ばれているものです。バリ・ヒンドゥーの世界では、神々の住む山があり、魔物のすむ海があり、聖獣バロンがいて魔女ランダがいるというように、浄と不浄、生と死、左と右、昼と夜、山と海など、全てが一対となっていて、この世界全てのものは一つでは存在しえないという考え方を持っています。街角や寺院の石像に白黒の市松模様のマントが掛けられている光景をよく見かけますが、これは、全ては二つの対立するものが存在して成り立っているという彼らの宗教感を表しています。古代日本人の崇めた「八百万の神々」は恵みの神と祟り神の二面性を持っていたことや、白と黒が絡み合う勾玉を信仰していたことを考えると、古代日本人の宗教感と近いもののような気がします。もしかして、バリが日本人を惹きつけるのは私たちの血が郷愁を感じるからなのかもしれません。
タナ・ロットの夕陽
心に沁みます…
タナ・ロット寺院
インド洋にぽっかり浮かんだ小島の上に立つ寺院です。残念ながらヒンズー教徒以外は中に入れません。
タナ・ロット寺院
猛毒を持つ海蛇が岩陰から見つかり、この寺院を守る守り神とされています。
田舎の小道
少し寄り道をして小道に入ると村の人々の生活が見えます。
ライステラス
ウブドから北のバトゥール湖へ行く途中、あまりにもきれいだったので車をとめて写真を撮りました。
バトゥール山
1917年、1926年、そして8年前の1994年にも噴火しました。今でも黒い溶岩流が谷間を埋めています。
バトゥール湖
バトゥール山の目の前にはバトゥール湖の大パノラマが広がります。
道端の祠
道を歩いていると、あちらこちらに祠が立っています椰子の木と青空のコントラストがきれいです。
ゴア ガジャ
11世紀前半の遺跡、象の洞窟と呼ばれています。中は真っ暗で、まるで悪魔の口に入っていくようで怖くてすぐに出てきてしまいました。
タマン アユン寺院の割れ門
1891年まで栄えたメングウィ王国によって建てられたバリではブサキ寺院について2番目に大きい寺院。
タマン アユン寺院のメル
何層にもなった椰子の葉葺きの屋根の塔(メル)が美しい。ここのメルは11層で、一番格が高いとされています。
タマン アユン寺院
お供えを運ぶ女性。
アルマ(美術館)庭園の石像
なんとなく大黒天と似ているような…。
道端の祠にあったレリーフ
バロンを象ったものや、その他様々な宗教的なレリーフがあちこちに見られます。
ウブドの北に広がる美しいライステラス