ワンデュ・ポダンのトンドル(大仏画)のご開帳の儀式はツェチュ最終日の午前3時頃から始まります。暗闇の中、打ち鳴らされる太鼓の音とご開帳を指示するお経のような単調な声から、時間の流れが止まったような不思議な空間が作り出されていきます。トンドルは村人たちの手により、徐々に引き上げられていき、暁の頃その全景をあらわします。同時に、ゾンの中庭には楽器を鳴らす男性達や美しい衣装に身をつつんだ女性達の隊列が入場してきます。ツェチュの最終日は、派手な踊りもなく、僧侶たちによる儀式が静かに行われてその幕を閉じます。
ワンデュ・ポダンの町は非常に乾燥した赤土の丘の上にあって風も強いため、アメリカの西部の雰囲気を醸し出しています。その丘の袂を豊かに水を湛えた川(プナカ・チュ)が流れていてます。サボテンがしがみつく赤い岩肌とプナカ・チュの青々とした川の流れが、不思議なコントラストとなって美しいこの町の景観を作り出しています。ワンデュの中心街は、小さな広場を数十件の商店が囲む形でこじんまりとしています。ツェチュのあと町を歩いてみると、ちょうど日本のお祭りの時のように屋台が立ち並び、ちょっとした食べ物(ゆで卵など)やおもちゃを売っていました。ワンデュ・ポダンの町から川をはさんだ対岸には棚田が美しいリンチェンガン村が見えます。伝承によると、インドから移住してきた人々の村ということで、建物といい、その立ち並び方といい、なんとなく他の村と違った異質な雰囲気の景観です。
プナカはティンプーに比べて1000m以上低地にあるため、亜熱帯性気候の南国的雰囲気の町です。1955年にティンプーが恒久首都になるまでの300年程、プナカはブータンの冬の首都でした。プナカ・ゾンは二つの川(ポ・チュとモ・チュ、すなわち父川と母川)の合流点に立っています。プナカからティンプーまでの道程は、1350mのプナカから、一旦3000mのドチュ・ラ(ドチュ峠)まで一気に上り詰め、2400mのティンプーまでを下ることになります。延べ2250mもの高低差により、約3時間でブータンの自然の変化を楽しむことのできるルートとなっています。生憎、ドチェ・ラ周辺は霧に覆われ、その美しい原生林を見ることはできませんでしたが、霧に覆われたダルシンがはためく幻想的な景色もなかなかのものでした。
写真説明:
(1段目左から右へ)
ワンデュ・ポダン・ゾンのトンドル、同左、同左、トンドルのご開帳を見物に来た兄弟、トンドル引き上げの指示をするワンデュ・ポダン知事、アツァラ(道化師)
(2段目左から右へ)
トンドル掲揚の儀式に見入るゾンの僧侶たち、ワンデュ・ポダンの商店街(店は多いが小規模)、リンチェンガンの集落、プナカ・ゾン、プナカ・ゾンの大僧侶、プナカ・ゾン、霧に霞むドチュ・ラの仏 塔とダルシン(経文旗)
ワンデュ・ポダン・ゾンのツェチュの儀式