ヒマラヤ地方に仏教を伝えたパドマサンババは、ブータンの人々にとってはグル・リンポチェ(至宝の師)として今も敬慕されています。そのパドマサンババの布教活動を再現し、その威光を悪霊たちに再確認させるために営まれる法要が「ツェチュ」です。
ティンプーのツェチュは毎年9月の5日間、ブータン仏教の総本山で国王のオフィスでもある「タシチョ・ゾン」で行われます。一般人は年に一回のツェチュの時だけゾンの中に入ることが許されます。ゾンの中央広場では、ダイナミックな仮面舞踏、ゆっくりとしたリズムのエキゾチックな音楽やコーラスが繰り広げられます。ツェチュはブータンの人々にとっては一年に一度の特別な日です。普段からおしゃれなブータン人ではありますが、この日は金糸銀糸で刺繍がされた絹の着物に身を包み、女性たちは銀や珊瑚、トルコ石のアクセサリーで身を飾りたてています。観客たちの煌びやかな衣装と真っ赤な僧服の強烈な色彩感覚は、エキゾチックな音楽と併せて、幻想の世界に迷い込んだような錯覚を起こさせます。
観客たちは、演目を楽しんだり、家族でお弁当を食べたり、露店を冷やかしたりして一日を過ごしています。子供たちはこのときとばかりにゾンの建物の中を探検して回っていて、屋根裏は子供たちの格好の隠れ家になっていました。 僧侶の中には、まだ5つにもならないほどの幼い修行僧達がいます。彼らは、若ければ3歳から普通の家の子供が寺に入り、家族から離れて少年僧たちと一緒に寺院で生活をすることとなり、一生をそこで過ごします。そんな彼らにとっても、ツェチュは寂しさを忘れさせてくれる楽しいイベントです
写真説明
(1段目左から右へ)
ツェチュの観客達、絹のゴ(男性の衣装)を着た地元の少年、美しいキラ(女性の衣装)姿の地元の少女(右の少女は父親が英国人だそうです)、肩車をして演目に見入る子供、屋根裏を探検する子供たち、キラ姿の少女たち
(2段目左から右へ)
仮面舞踏(チャム)、同左、少年僧、舞台裏(テント)から舞台を覗く少年僧、ラッパ(ドゥンチェン)を吹く青年僧、仮面舞踏
(3段目左から右へ)
少年僧、演目骸骨の舞(ドゥルダ)、幼い修行僧、祭りを見物する高僧、あふれるほどの観客達、タシチョ・ゾンの僧侶たち(手前はアチェラ(道化師))
ツェチュの祭りを楽しむタシチョ・ゾンの僧侶たち
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