ヒマラヤ山脈の東にある神秘の王国ブータン。近代に至るまで鎖国的政策をとっていたこともあり、近隣の国々の影響をほとんど受けておらず、独自の仏教文化を色濃く残しています。旅行客に対しても色々と制限があるため、海外からの旅行客は年間数千人と少なく、観光客慣れしていない素朴な人情に今でも触れることができます。また、ブータンは今なお手付かずの大森林が残っている貴重な国でもあります。山がちのブータンの国土の中で、滑走路を作るための平地に恵まれたパロにこの国のたった一つの飛行場があります。パロ空港に降り立つと、小さな平屋の建物がぽつんとあり、ブータンの民族服である「ゴ」を着た係員が暖かく迎えてくれます。空港を一歩でるとあたりには水田が広がり、戦前の日本にタイムスリップした気分になります。パロの標高は2,300m程ではありますが、ブータンの中では比較的低地にあり一番の米どころと言えるかもしれません。
ブータンの各所には政教の中心となる「ゾン」という巨大な建築物が建てられています。パロの城塞「パロ・ゾン」とその下のカンチ・レバー橋はベルドナルド・ベルトリッチ監督の『リトル・ブッダ』のロケ地になったところです。ブータン仏教では「転生仏」(仏は生まれ変わり人間に宿る)を信じており、『リトル・ブッダ』ではパロ・ゾンに住むの高僧ラマ・ノブルが尊師ラマ・ドルジェの生まれ変わりを探すというストーリーで、ブータンの自然が非常に美しく描かれています。
パロの郊外には、ブータン最高の聖地であるタクツァン僧院があります。僧院は垂直に切り立った屏風のような岩壁にへばりつくように建てられており、通常観光客は僧院内に入ることはできず、3時間近くかけて手前の岩山に登り、そこから眺めるのみです。僧侶たちは一体どこから入るのか見当もつきませんが、しばらく見ていると小さな人影が岩壁に作られた狭い道を歩いているのが見えました。残念ながら左の写真の中心の建物は1998年に不審火により焼失してしました。
パロの商店街は一本の道の両側に色鮮やかな伝統様式の商店が並んでいるだけのものです。ここに土産物屋が数件ならび、ポンチュ(竹で編んだ容器)や漆塗りの器、民族衣装であるキラなどを買うことができます。
写真説明:
(1段目左から右へ)
パロ谷のお花畑、パロ・ゾンと経文旗、パロ・ゾン、タクツァン僧院、タクツァン僧院に登る岩山の途中にある仏塔と経文旗、パロ・ゾンの下にあるカンチ・レバー橋
(2段目左から右へ)
パロのメインストリートで出会った学生たち、パロ空港の滑走路、パロのメインストリートにある食料品店(赤唐辛子が干してあります)、パロ空港のターミナル、タクツァン僧院の岩山に上る途中にあった温泉、民家の屋根に干した赤唐辛子
絶壁に立つタクツァン僧院 (1998年焼失)
『リトル・ブッダ』(1993年伊仏合作)
監督:ベルナルド・ベルトリッチ
出演:キアヌ・リーブス